初代表選出は2013年。35歳の最年長選手は、チームでいちばんの元気キャラでもある
(写真は2024年のニュージーランド遠征)

さくらジャパン、パリへ走る! 選手ストーリー・DF 及川栞 ②

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最終予選突破を決めた直後、さくらジャパンの表情。
2024年1月19日、アウェー戦でインドを1-0で破って決めた

 

PROFFILE
及川 栞 [東京ヴェルディ/タカラベルモント(株)]
⚫︎ おいかわ・しほり。
1989年年生まれ、岩手県岩手町出身。
身長165cm。ポジション=DF。
沼宮内小→沼宮内中→不来方高→天理大→ソニー
→オラニエ・ルード(オランダ)→東京ヴェルディ
→キャンベラ・チル(オーストラリア)
→東京ヴェルディ/2022年1月よりタカラベルモント(株)所属 
⚫︎ 2013年に日本代表初選出。
日本代表大会出場暦:
東京オリンピック(2021)、
アジア大会(2014、2018、2023)、
ワールドカップ(2014、2018、2022)、
ネーションズカップ
(2013、2015、2017、2022、2024 ※2017まではワールドリーグ)。
日本代表キャップ186(2024/6/30時点)。

 

7月、フランスでのオリンピックに乗り込むホッケー女子日本代表・さくらジャパン。その主力として日の丸を胸に、粘りのディフェンスと確度の高いスティックさばきでチームを支える及川栞選手をクローズアップする。2016年には、27歳にして単身、世界1位国のオランダの1部リーグに挑戦し、日本女子ホッケー初のプロ選手となった(2018年)。成長をやめないアスリートは、パリに向かうチームの成長を、誰より楽しみにしている。 [構成・写真/JHA]

小さなコミュニケーションがそれぞれの力を引き出す

――及川さんは、これだけの存在感を放ちながら、キャプテンではないんですね。

チームをまとめているのは二つ年下の友理(永井友理=ソニーHC BRAVIA Ladies)。素晴らしいリーダーで、チーム歴も長い。最年長ではありますが、私なんかとても……。私、チームで一番若い選手と干支が一緒なんですよ。あはは。それでも、私はチームの中でも元気な方です。

年齢で意識することは……いちばん上だからこそ、ドーンと立ってるだけでは、うまくいかないと思っています。日本は文化的にタテ社会。上役や年上を立てますよね。たとえば私がプレーしたオランダ(世界ランキング1位のホッケー大国)では、それはなくて、みんながすごくフランクに話します。それも、実はベテランの選手たちが話しやすい空気を作っている。結果、みんなの意見がゲームに生かされる。それは肌身で感じてきました。

チームの中で若い選手がもたらすものに勢いがあります。日本に戻ってからは、選手がそれぞれの良さを出せるようなコミュニケーションを意識するようになりました。

若い時って、ちょっとミスしたり、期待通りにいかないことがあると、内向きになって、下を向いてしまいがちですよね。悔しくて、不甲斐なくて、勝手にプレッシャーが感じたり。そういう時は「わかるよ」と、一声かけることもあります。一人で悩まなくてもいいよ、大丈夫だよ、って。もちろん人の性格、タイプによりますが、そんな短いやりとりでも、積み上げればチームへの安心感につながっていく。

大事なのは、チームとしてパフォーマンスを示すこと。そのために声掛けが必要ならする。違う方法が求められることもあります。時には言葉よりプレーの方が伝わる。だから「ここは体を張って」と意識的にいくこともあります。私はディフェンスなので、最後のラインがそのようにプレーすることで場が締まる、それもチームに安心感をつくる一つかなと。

 

――個人を高めていくこととチームの力にまとめていくこと。今、さくらジャパンはどこにフォーカスしているのですか。

ベースには、ジュード(メネゼス)ヘッドコーチの「チーム ファースト」というキーワードがあります。たとえ突出した選手がいたとしても、チームよりもその子が上に位置付けられることはない。チームに対してネガティブな言動をする選手はいません。文字通りにチームを第一に考え行動できる人が生き残って、ここにいます。だからこそ、最終予選を勝ち抜けた。「チーム ファースト」の信念は、若い選手とも共有できているし、チームの外の人にも感じてもらえています。

その上で今はまだ個々を伸ばす時期と考えています。それぞれのスキルを、自信を持って発揮できることにフォーカスする。そのことで、チームとして完成するスケールが変わってくると思います。

 

チームファーストと基礎技術の質

――それぞれ役割を持つ一人ひとりがスキルを高めていく上で、さくらジャパンに共通したテーマはありますか。

世界トップチームとの差は、基本技術の質にあると感じています。うまい選手って、アクロバティックなプレーではなく、シンプルなことを、シンプルにできるんです。浮き球をスッと止める。誰もいないところで強く正確なパスが出せる。本当にベーシックなこと、だけど、それがいつでもできないとパス回しのリズムも出ないし、無駄な動きが多くなる。見ている人にとって簡単そうに映るのが、個々としてもチームとしてもいい状態だと思います。

 

――東京大会から3年です。このチームが積み上げてきたものは何ですか。

東京オリンピックは、スペイン戦以外、敗れた試合はすべて1点差でした。勝敗を分けたのはほんのわずかな違いだったと思います。しかしその差を埋めるのは簡単なことではない。それこそ、基礎技術です。たとえば、ディフェンスが止めてクリアする。そこで起きる少しのずれが、最後のシュートの小さなずれにつながっていく。その積み重ねが1点の差になった。東京のメンバーは半分が入れ替わっているので、それをオリンピックの舞台で実感したメンバーは多くはありません。チーム立ち上げから取り組んでいる基礎技術の徹底を、どれくらい発揮できるか。3年前との違いを見せたい。

 

――及川選手がファンにおすすめする注目選手を教えてください。全員、はなしです!

社会人1年目、最年少の長谷川美優紹介ページ)。アジア大会(23年10月)で、急遽サブから上がってきた選手です。これまでの経験がないぶん、成長は目覚ましい。FWとしての基礎技術のレベルが高い。メンタル面など、自分の課題を探求していくことができれば、これからも大きく伸びると感じます。彼女には次以降のオリンピックにもチャンスがあるだろうし。「ハセー!」って応援してあげてください。

もう一人は、MFの島田あみる紹介ページ)。ボールを持った時のスピードはチーム一です。素走りで短距離を走らせれば、速い選手は他にもいる。あみるはスティックを操ってボールと一緒に加速していく。彼女が作り出すフィールドの右からのスピードアップはチームの強みでもあるので、あみるの活躍はチームの活躍です。その時は盛り上がってください! チームのアタックのギアを変えるプレーヤー。私たちディフェンダーも、あみるがスピードに乗ってボールを受けられるボールを(出すことを)意識しています。

 

――日本が、世界トップと戦うゲームで、他に見てほしいところは。

粘り強さ、ですね。そのためにもやはり「チーム ファースト」がキーになるのだと思います。このチームのために、どれだけ走り切れるか。最後まで走れるか。オリンピックをゴールとすれば、このチームで戦える試合は確実に一つずつ減っていく。予選リーグで終わるのか、決勝リーグへ進めるかでもその数は変わってくる。少しでも長くこのチームで戦いたい! 私たちはその気持ちをプレーで出し切ります。

 

――接戦を凌ぐイメージでしょうか。

当然、失点をいかに抑えるかは重要。プラス、強豪相手に数少ないチャンスでスコアできる力が試されます。

局面として、リーチのある相手には1対1でどうしても劣勢に回ることがある。そこで、相手一人に対して日本は1.5人、2人で対応する。これは、自分の目の前の敵だけを見ていてはダメだということです。走り続けながら、「次」「はい次」と、自分がどこをカバーするのか、視野を広く持ってフォローし続ける。

 

――ものすごくしんどそうです。

それをやり続けられるかが、私たちの生命線。その努力が勝敗を分けます。

オリンピック最終予選では、そんな、しんどい時にこそ出てくる力を少しは体現できたのではと感じています。一人抜かれても、次が来る。今できるプレーに集中して、判断して走り続ける。そういう時の一体感、やっていてもすごい感覚でした。どれだけ攻められていても、点を取られる気がしない。私たちは守り切れる、と思えました。

見ている皆さんにも、何かが伝わる戦いをします。応援よろしくお願いいたします。

[次回 (その3) に続く]

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